日本人の自然観

2015-04-18

日本はとても自然豊かな国です。森林率は70%で先進国2番目、世界200国中ですと15番目に高い数値です。世界的な工業国・産業国である日本が、なぜこのように緑豊かな国でいられるのか、近年世界で注目を集めています。私はそれは「日本人の自然観」にあるのだと思います。

ところで、「自然」という言葉からどのようなイメージを思い浮かべますか?「山、川、海、木、花」などで、もしくは魚や動物も想像するかもしれません。これは名詞の形です。しかし、一方で「自然な~」「自然に~」などの形容詞・副詞で用いられることにも気づくでしょう。「自然にやればいいよ」などと言ったりしますよね。また、「不自然」という言葉がありますが、これは植物や動物を指している訳ではありませんね。私たち日本人が古くより育んできた自然観は実は後者、形容詞・副詞の形でした。

江戸時代より以前、「自然」という言葉は「自然(おのずから)」と訓ぜられ、形容詞・副詞の形で用いられてきました。それが明治30年代に入って「nature」という語に「自然」と訳した頃から、名詞の形で用いられるようになりました。では江戸時代以前、「山、川、海、木、花」はどのように表現していたかというと、「天地、万物、森羅万象」などと呼ばれていました。よって、日本人が古来より培ってきた自然観とは、「自然(おのずから)」の思想であると言えます。「おのずから」は「己つから」であり、「から」は「生まれつきの意」です。人間もまた「自然(おのずから)」天地と共に生まれ、自然の一部なのです。そして八百万の神は、山、川、海、木、石などあらゆる自然物に宿り、神もまた「自然(おのずから)」をその本質としているのです。

江戸時代の国学者である賀茂真淵は、自身の著作であり『国意考』で「ここの国は、天地の心のまにまに治めたまひて……あら山、荒野の有か、自ら道の出来るが如く、ここも自ら、神代の道のひろごりて、おのづから、国につきたる道のさかえは……」と著述しています。日本という国のあり方は、天地のあり方、神代の時代がそうであったように、「自然(おのずから)」成りゆくのを良しとする。

松下電器の創設者である松下幸之助さんは、経営の秘訣を質問された時にこう答えています。「強いて言えば、”天地自然の理法”に従って仕事をしていることだ」それは何も難しいことではなく、雨が降れば傘をさすのと同様に当然なすべきことをなす、ごく自然なことであるといいます。適正な従業員を雇い、適正な給料を払い、適正な物をつくり、適正な利益を得る。そういうことなのでしょう。

国や経営にも「自然」はあるのです。「日本人の自然観」は植物や動物を含む、より広い思想であることがわかるかと思います。この「自然(おのずから)」の世界観で生きる私たち日本人は、「自然体」で生きることが1番なのでしょう。

shizen